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自宅兼事務所、そしてモデルハウスでもあるこの家は、木・竹・土・ワラなどここ西多摩周辺で手に入り、いつかは自然に還る素材でつくりました。

 

エアコンはなく、電力・給湯の半分以上、暖房とトイレ用水はほぼ100%自然エネルギーでまかなっています。住みながら多少の手間がかかりますが、消費する電気の量は一般家庭(5人暮らし)平均の1/5、ガスは1/3、水道は1/2を下回り、灯油や薪は一切買っていません。

お風呂は毎日入るし、冷蔵庫も使っていて、節約に耐え忍ぶ暮らしということでもない。太陽光発電パネルと太陽熱温水器のほかに大がかりな設備はなく、家自体は実にシンプルです。

敷地まわりの自然と暮らしがうまくつながる家を、いつでも手直しがきくようにつくっておけば、あと少しの手間で、現代人はもっとゆとりを持って暮らせるはずなのです。

建物だけでなく、周辺環境も含めて、住まい方を考えます

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◉私たちの考える「ゆとり」

今のペースで使いつづければ、いずれ底をつく化石エネルギー。限られた国でしか採れないものだから争いが起き、分け合っても地球温暖化が加速する…そんな行き止まりの未来を何とかしたい。せめて自分たちの生活が及ぶところでは、再生可能な資源を使い、汚した環境は元に戻すような暮らし方で、小さくても円くつながる循環の輪を確保したい、と感じています。

 

この家では、パッシブソーラー、風力、太陽光、雨水、バイオマス、微生物など、身のまわりにある自然エネルギーに頼った生活をめざします。食料も自給までは無理でしょうが庭で果実や野菜を育て、2012年からは友人たちと小さな田んぼを借りて米作に挑戦しています。

持続可能な自然エネルギーで暮らせるようになればまず“生きもの”としての自信と余裕が持て、より自分たちのペースで生きていける気がします。

江戸時代、大根と引き換えに下肥を

集めて回るお百姓さん(「金草鞋」)

資源が見えるところで循環していた

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◉パッシブソーラーのこと

夏場の冷房(エアコン)は「私」空間を冷やしてくれる一方で、「ご近所」に大量の熱を排出しています。街中の人がこれをやると、外気温はますます上がり夏はもっと不快に、皆はさらに冷房を動かし、大量のエネルギーを消費するこの悪循環。

高気密・高断熱による省エネも必要ですが、ビニール系の断熱材に包まれているより、夏は木蔭、冬は日なたの心地よさを感じていたい…。

パッシブソーラーは、敷地まわりの自然条件を利用して建物を通り抜ける「熱の流れ」をコントロールする設計手法です。                      

まず建物まわりのさまざまな「熱」の発生源を調べ、欲しい熱は壁や床に蓄えて徐々に放出させ、いらない熱ははじめから中に入れないように建物を設計します。あとは住まう人が気候や時間帯に応じて窓を開け閉めすることで、家全体の温度をできるだけ一定に保ちます。

こうして建物の熱環境を整え、快適に過ごせる期間をできるだけ広げた上で、足りない分を補助設備で補うようにします。

この家では…

​冬

南面に大きなガラスを入れて太陽光で家の中を暖め、熱を外に逃がさないようにします。

土壁や土床の蓄熱効果も大きく、真冬でも日中よく晴れていれば次の朝まで丸一日「無暖房」で過ごせます。足りない熱は薪ストーブで補います。

ここ数年は、冬期(1〜3月)のうち、約2/3の期間を無暖房で過ごせています。2015年では90日間のうち、ストーブを使ったのはわずかに19日でした(残り3/4以上の日は無暖房!)

 

★​2015年冬の記録はこちら(PDF)

日中は窓を閉めています。都市部では、いくら風通しをよくしても、窓からは熱い空気しか入ってこないからです。

ただ、庭の木が大きく育って、緑のカーテンが窓を覆うようになってからは、日射が遮られ、窓から涼しい風が入ります。南に面した居間はまるで木陰の涼しさです。

夜は高所の窓を開け、夜間冷気を蓄えます。真夏でも扇風機だけで充分しのげます。

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◉地元の自然素材でつくる家

意外にも、東京都の全面積の約4割は森林で、その半分近くが西多摩の人工林です。他の地域と同じく、戦後集中的に植えられたスギ、ヒノキが大きく育って伐り旬を迎えていますが、木材価格の低迷や人手不足で手入れの行き届かない山が多く、貴重な森林資源がうまく活用されていないのが現状です。

地元にこれだけの木があるのに、使用する8割もの木材を外国から輸入している今の日本。輸送にかかる燃料のことを考えても、地元で良材が手に入るのだからぜひ使いたいものです。

自然素材は高いというイメージがありますが、材料自体は決して高いものではなくただこれらを使いこなすための手間が相当にかかるため、費用がかさんでしまうのです。

この家ではもっぱら節約のため自らの手でいろいろとやりましたが、やはり手練の職人さんの技は美しい。その価値は住んでみるとよくわかります。

最近の家の建ち方を見ていると、同じ予算で家を建てるなら、豪華な設備をいくつかガマンしても、職人さんの手間は省かないで欲しいとつくづく感じてしまいます

土は川越の荒木田土を 半年ほど寝かせて使いました。

ワラは羽村の田んぼのもの。 短く切って土に混ぜ込みます。

竹は日の出町の真竹。自分たちで竹林から伐り出しました。

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◉雨が降っても、風がふいてもうれしい家   〜自然エネルギーいろいろ

◆太陽光、太陽熱

東京の冬はとにかくよく晴れる!南側で日当たりのよい部屋は、暖房なしでも十分過ごせます。

土壁や土床にこの熱が蓄えられるので、夜間はもちろん、翌朝まで暖房をつけずにいることもよくあります。朝の外気温が氷点下でも、室内はだいたい13〜14℃に保たれています。

湯沸かしに必要な大量のエネルギーも、太陽熱温水器があれば相当に節約できます。

太陽光発電は、2014年末から始めました。月々の電力消費量は、家族5人で60〜70kwh程度(これは、日本の一世帯あたり平均の1/5程度)で、売電が 月300〜400kwh、売電価格は37円/kwhなので、この調子だと設備投資は 10年以内に回収できそうです。

◆雨水

日本人の大人一人が使う水は1日200〜250リットル。しかし飲料用などで安全性が要求されるのは、そのうちのわずか0.5%といいます。

ますます貴重になる上水に代えて、年間1000mm以上降る東京の雨を、トイレに、散水に、洗車に、防火用水に、ぜひ活用したい! 我が家には計4トンの雨水タンクがありますが、そのうち2トン分で、家族5人のトイレ用水を賄えています。

◆風力

建築時に小型の風力発電機をつけましたが、発電量があまりに少なく、一方で 風切り音が気になるので今はあまり使っていません…。見た目がかわいらしく、 近所のお子さんたちが楽しみにしてくれているので、風の弱い日に回してみたりしています(^_^;)

太陽熱を蓄えた土床は、穏やかなあたたかさが持続する。土壁ではよく晴れると真冬でも40度近くになり、傍にいるだけで輻射熱でぽかぽかと暖かい。

​1トンの雨水タンクを4つ、家の四隅に埋めこみ、雨どいからの水をすべて貯めている。

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